2011年9月20日

お茶屋から逃げ出したくくり猿

勝恵美1995年 北野天満宮(京都市上京区馬喰町) NikonF4 Nikkor180mmF2.8 Fujifilm Provia100F

舞妓体験 八坂庚申堂(京都市東山区金園町)Fujiilm Finepix X100
安井金毘羅宮から東大路に出て、今度は八坂の塔の手前にある金剛寺に寄ってみることにした。朱色の門をくぐると、舞妓体験の観光客が記念撮影をしている最中だった。フェイク、要するにニセ舞妓で、ホンモノと間違えて写真を撮る人が多いそうだ。私は一目見れば、それがホンモノかどうかすぐ分かる。若いころから祇園、先斗町、上七軒とお茶屋を遊び歩いた体験があるからだろう。舞妓自前の地毛と鬘(かつら)は違うし、化粧、着物の着方、果ては歩き方まですべてが違う。それにイベントやコマーシャル撮影ならともかく、真昼間、舞妓が観光スポットで記念撮影というのは余りにも不自然だからだ。このような舞妓変身の商売が登場したのは、おそらく昭和の終わりごろに遡るのではないだろうか。祇園白川で撮影中の横でスタッフが「ホンモノではありません」という看板を手にしてしていた記憶がある。きっと花街から苦情が上ったのだろう。昨今はそのような看板は目にしない。さて一行が去るのを待って、境内を散策する。夥しい数の「くくり猿」が吊るされている。猿はしょせん動物だから、欲望のままに行動する。人間の心の中にひそむ欲望を抑える、手足を縛られて動けない姿はその象徴だという。お茶屋遊びから遠ざかった今の私は、欲望を抑えられたくくり猿なのかもしれない。それはともかく、病気平癒や縁結びなど、参拝者はさまざまな願いごと書いて吊るす。それをかなえてもらう秘訣は、欲望のひとつを我慢することだそうだ。寺は八坂庚申堂の通り名で親しまれている。庚申信仰と結びつくという「見ざる言わざる聞かざる」は、生きてゆくための知恵なのだろう。本堂入り口の前に三猿が陣取っている。

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