2012年5月19日

大阪の橋下市長は希代の文化破壊者

浪子燕青  歌川国芳「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」  (画像をクリックすると拡大表示されます)

刺青・秘密(新潮文庫)
浪子燕青(ろうしえんせい)は中国の伝奇歴史小説「水滸伝」に登場する豪傑である。相撲が強く、足首から背先まで全身に唐獅子牡丹の刺青を彫っていた。歌川国芳が描いた「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」は勇壮、そして優美だ。この絵から刺青を嫌悪する人は稀であろう。歴史小説を題材にしたものであり、現実の生活とかけ離れてるからだろう。ミャンマーなどの伝統的な刺青の写真をを見ても、同じかもしれない。ところが身近に入れ墨をした人を一般にどう見ているだろうか。例えば5月18日読売新聞電子版に、橋下市長「タトゥー市職員、ガガさんでも断る」という記事が載っている。それによると、歌手のレディー・ガガさんや俳優のジョニー・デップさんが入れているようなファッションとしてのタトゥーについて見解を問われ、「ガガさんやデップさんが大阪市職員になるなら断る。歌手や俳優だから支持されるのであって、公務員の入れ墨は許されない。(ガガさんらが)大阪市を受けるわけはないが」と述べたという。

議論が芸能人に流行しているタトゥー程度の話にとどまっている。刺青はかつて刑罰のひとつだったし、暴力団関係者の象徴として一般的に認識されている、ということで市長は職員の刺青禁止令を思いついたのだろう。残念ながら「刺青文化」にまで論議が突っ込まれていない。入れ墨をしている職員は「大阪市を辞めて、許されるところで個性を発揮してもらったらいい」と恫喝しているのも気になる。府知事時代に国立文楽劇場の舞台を見て「二度と文楽を見ることはない」と放言、文楽協会への府補助金を半減させた。さらに市長になってから予算案で、年5200万円あった補助金を凍結してしまった。補助金ゼロになる可能性もある。この暴挙はまさに文化オンチ、いや文化破壊者そのものである。橋下氏は「独裁者」を自認しているようだが、ヒットラー、そして北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)でさえ芸術を愛していた。せめて谷崎潤一郎の処女作である「刺青」くらいは読んで欲しいと思うが、手に取らないだろう。浪速の暴君に何を言っても無駄に違いない。大阪市民はタイヘンな人を首長に選んでしまったものだ。

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