2012年9月10日

消えゆく銀塩アナログ写真の灯


Efke IR820 Infrared Film
クロアチアのフォトケミカ社のエフケ(Efke)ブランドの写真フィルムが製造終了になったという。同製品を扱っているデジタルトゥルースフォト社8月31日付ブログによると、今年8月初めに印画紙の乳剤塗布設備が修理不能になり製造中止すると報告したが、フィルム生産は続くだろうと思われていた。しかしクロアチア本社からの報告によりすべてのフィルムの生産を終了することが分かったという。エフケといえばかつてコダックが作っていた127フィルム、いわゆるベスト判の製造販売で有名だが、もうひとつは赤外線フィルムIR820で知られている。これはかつてドイツのマコ(MACO)ブランドのIR820cとして売られていたものである。可視光線の赤色の波長はおおむね620~750nm(ナノメートル)だが、これより長い波長の光を赤外線と呼ぶ。ヒトの目では見えないが、この領域まで感ずるのが赤外線フィルムである。

図は赤外線フィルムの分光分布感度を表したものだが、この中ではコダック(Kodak)の高感度フィルムHIEが900nm以上の波長を感ずるという抜群の性能を誇っている。しかし販売成績が思わしくなく、一部のファンに惜しまれながら、2007年に製造販売中止になってしまった。図にはないがコニカも赤外線フィルムを作っていたが、ミノルタと合併した同社は今や写真感材自体から撤退している。残るはローライ(Rollei)ブランドのIR400とイルフォード(Ilford)のSFX200だが、後者は長波長の赤色に感ずるが、純粋な赤外線フィルムとは言い難いような気もする。さてエフケのフィルムだが、製造機械の老朽化を原因にしているが、やはり販売成績が主な理由だと私は想像している。倒産に追い込まれたハンガリーのフォルテの老朽化した印画紙乳剤塗布設備をドイツのアドックスが引き継いだという例がある。しかしエフケの場合は、修理しての再開は割が合わないということではないだろうか。

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