2012年10月22日

時代祭平安時代婦人列衣裳の彩色美

清少納言の十二単 京都御所(京都市上京区京都御苑)

かさねの色目(青幻舎)
秋晴れの今日「時代祭」に出かけた。それこそ若気の至りで、初めてこの祭を見たときは「なんだ仮装行列じゃないか」と突き放してしまったことを覚えている。同じ日に開催される、幽玄にして勇壮な「鞍馬の火祭」に強く惹かれたせいもある。ところがその後、平安神宮での衣裳の虫干しなどを取材しているうちに、時代考証の専門家によってしっかりと考証され、再現されたものと知り、次第に興味を抱くようになった。行列のハイライトは「平安時代婦人列」で、二重の意味で魅力がある。ひとつは衣裳の美しさ、そしてもう一つの魅力は、衣裳を纏うのが京都五花街の芸妓(げいこ)と舞妓さんであることだ。

輪番制で今年は先斗町の番だった。衣裳美の極致は清少納言役の十二単だろう。袿を重ね着した重ね袿姿のことだが、英語でレイヤーと表現したほうが分かり易いかもしれない。その配色につては長崎盛輝『かさねの色目―平安の配彩美』(青幻舎)に詳しい。文庫本になっているのでお勧めである。かさねの色目の研究では、季節ごとに如何なる色目が選ばれるかが問題になるが、その色目の多くは自然の植物に関わるという。これによって当時の人々が如何に「季」というものを大切にしたかが分かるし、平安の服色には移ろいゆく大自然の表情が感じられるという。平安人の配色の妙は単に貴族の豪奢、つまり贅沢では片付けられない。その繊細な美的感覚の片鱗を時代祭の衣裳に窺うことができるのである。

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