2012年12月4日

ジョブズの下では働きたくないと思ったけど惹かれてしまっただろう不思議


Steve Jobs I II  ウォルター・アイザックソン著・井口耕二訳

アップルのiPhoneやiPadのタッチパネルインターフェースに関し、スティーブ・ジョブズが「指こそ最高の道具」と述べたと何かで読んだのだが、出典を思い出せない。若い頃はヒッピーだったジョブスは東洋思想に傾倒、インド放浪をしている。私もインド旅行したが、英国に留学したことがある政府の高官と食事をする機会を得たことがある。テーブルのナイフやフォークを退けた彼は、指で食べ物を摂り始め「器械を使って食べても美味しくないからね」と微笑んだ。ジョブズもこの考えに近いかなと思っているうちに『スティーブ・ジョブスIII』(ウォルター・アイザックソン著・井口耕二訳)に書いてあるかもしれないと思い至った。昨年ハードカバー版が出たときに「上下2冊で4,000円弱は高いな、文庫になったら買おう」とパスしたまま忘れていた本だ。先月ペーパーバックス版が出たのでゲットした。書架が満杯ということもあって、私は文庫、あるいはソフトカバー版化の可能性がある書籍はそれを待つことにしている。

伝記を読むのは『オキーフ/スティーグリッツ―愛をめぐる闘争と和解』(ベニータ・アイスラー著・野中邦子訳)以来である。ざっと通読してみたが「指こそ最高の道具」という下りは見つからなかった。さて読後感だが、おそらく読んだ人の個人史によって様々だと想像する。私はやはり1970年代の若きジョブスに強く惹かれるものがあった。ドラッグを体験、仏教哲学に傾倒して禅修行、ボブ・ディランの歌を愛し、アンセル・アダムスの写真を好んだ。これは私の嗜好あるいは思想形成とオーバーバーラップする。違うのは私には彼のような他者に対し自己を主張を押し通す力がないことだ。時に部下を打ちのめしたので、私だったらその下では働きたくないと思っただろう。しかし天才と言ってしまえばそれまでだが、打ちのめされても最後は惹かれる不思議な存在だったようだ。素晴らしい製品を創り出したからだ。ところでアマゾンで調べたらKindle版がハードカバー版と同じ価格で、結果的にはペーパーバックス版より高くなっている。

追記:精読したところII(下巻)P39~40に以下のような記述がありました。"目の敵にしたのがニュートン――手書き文字が認識できる携帯端末――である。(途中略)スクリーン専用のペン=スタイラスペンを使うのが嫌だったのだ。「神は我々に10本のスタイラスペンを与えたもうた」と指を動かし、「これ以上、発明するのはやめよう」と主張したのだ。" (12月11日)

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