2014年2月5日

壇浦兜軍記「阿古屋琴責」Kindle版を読む

平清盛(左)と阿古屋の宝塔  六波羅蜜寺(京都市東山区松原通大和大路東入る)

文楽新春公演(画像クリックで拡大)
国立文楽劇場(大阪市中央区)の初春公演が1月26日に千秋楽を迎えたが、行きそびれてしまい、いささか後悔している。J-CASTニュースによると文楽の年間入場者数は10万1,204人となり前年から2.5%減少、大阪市が協会に提示した補助金満額支給(3,900万円)の条件である10万5,000人に僅かに届かず、約730万円減額される見通しとなったからだ。橋下徹市長は出直し選挙をするそうだが、市長選の費用は少なく見積もっても6億円かかるという。なんと文楽への補助金のおよそ19年分を数週間で使ってしまうのである。憤懣やるかたない無謀な決定だが、文楽救済の一助としてやはり行くべきだった。そしてなによりも残念なのは今回の演目のひとつである「壇浦兜軍記」の「阿古屋琴責の段」を見損なってしまったからだ。私がこれを観たのは国立文楽劇場ができる前、道頓堀の朝日座だったからずいぶん昔の話になる。浄瑠璃「壇浦兜軍記」は近松門左衛門の「出世景清」の改作で、文耕堂・長谷川千四合作、享保17年(1732)に大坂竹本座で初演された。

三段目口の堀川問注所の場、すなわち「阿古屋琴責の段」は、平家の残党悪七兵衛景清の行方を探す鎌倉方の畠山重忠が、五条坂に住む愛人の傾城阿古屋を捕えて景清の所在を問いただす。阿古屋が知らぬと申し開きしたので、琴、三味線、胡弓を弾かせて詮議する。その音色が乱れていないことから、ウソをついていないことを知り釈放するという話。文楽では三曲を三人の奏者が演奏するが、歌舞伎では身代わりができないので、一人の役者が三つの楽器を弾きこなす必要がある。坂東玉三郎が有名だが、まだ観たことがない。しかしその玉三郎と確執があったと噂される六代目中村歌右衛門の阿古屋を撮影したことがある。確か京都の南座だったと記憶しているが、舞台下だったので、その迫力ある演技は今でも脳裡に残っている。ところで六波羅蜜寺の本堂の南側に阿古屋の供養塔がある。鎌倉時代中期に造られた花崗岩の石造宝塔で、台座は古墳の家型石棺の蓋が代用されているが、隣の平清盛の宝塔よりどっしりしているのが面白い。なお「壇浦兜軍記三段目阿古屋琴責」のKindle版は99円で購入できる。私はアマゾン電子書籍リーダーを持っていないので、アプリを使ってグーグルのタブレットNexus7で読んでみた。視認性は劣るかもしれないが、様々な用途に使えるので、今はKindleに食指を伸ばさないことにしている。

Amazon  壇浦兜軍記 三段目 堀川問注所の場 ─ 阿古屋琴責 ─ (日本古典文学電子叢書) [Kindle版]

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