2016年3月12日

CDはCDを超えることができない


オーディオ売り場をぶらぶらしていたら、高音質CDと書いたガラスケースがあったので中を覗いてみた。私にとってさして関心のないジャンルばかりだったが、中に一枚、カントリー音楽の大御所、ウィリー・ネルソンのディスクが目にとまった。彼の名前を「威利・尼爾森」と繁体字で書いてあったので、てっきり台湾製かと思ったが、ABC(国际)唱片という中国のレーベルだった。同社のウェブサイトによると、世界レベルの音楽アルバムを高音質製品化化し販売するため2000年8月に設立されたという。企画のみで製造はドイツということだが、中国での高音質レコードの先鞭をつけ、海外市場で成功を収めているようだ。私は知らなかったけど、日本のオーディオ愛好家の間ではかなり浸透しているようだ。このCDはHD(High Definition) マスタリングシリーズの一枚で、聴いてみたところ確かに音質に優れてると思う。思う、と書いたのはどのように優れてるか科学的に説明できないからだ。同じ音源からマスタリングした曲を探して聴き比べれば、やや説得力があるかもしれない。比較といえばずいぶん前に2枚組のCDを購入したことがある。 EMIの「HQCDで聴く高音質クラシック」で1枚目がHQCD盤、2枚目が通常CD盤で、同じ音源を二つの方式のマスタリングを聴き比べることができるものだった。これまたオーディオ愛好家向けだったと思うが、確かに作り方によって音質の違いが出ることが分かった。しかしこのようなCDが一般に普及しているとは言い難い。というのは音楽愛好家がオーディオファンとは必ずしも言い切れないからだ。好きな音楽なら音質に関わらず購入すると思われる。またおそらくすでにオーディオ愛好家は、CDの音質を上回るハイレゾ機器およびその音源に取り憑かれてるに違いない。CDは中に入る情報量におさえるために、記録しきれない音の領域があることが致命的である。CDはCDを超えることができない。

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