2016年12月17日

プーチン大統領に翻弄され稚拙さが浮かび上がった安倍外交

ウラジーミル・プーチン大統領(フリー壁紙

新聞および通信各社の電子版によると、山口県長門市および東京で開催された日露首脳会談の結果を受け、自民党の二階俊博幹事長が16日、記者団に「国民の大半はがっかりしているということを心に刻んでおく必要がある」と述べたという。これはロシアに対する外交交渉が失敗に終わったことを認めた発言だろう。今年9月2日にウラジオストクで開催された日露首脳会談の直後、安倍首相が「新しいアプローチに基づく領土交渉に道筋が見えてきた。その手応えを強く感じ取ることができた会談だった」と力説した。そして長門市で首脳会談を行うことで合意したわけだが、確かにあの時点では領土問題が進展すると思った人は多かったかもしれない。ところが来日が近づくにつれて、首相の発言が「そう簡単な課題ではない。一歩一歩、山を越えていく必要がある」とトーンダウン、期待感は一気にしぼんでしまった。プーチン大統領は「南クリル諸島(北方四島)はロシアの主権下にある」という主張を堅持している。1956年10月、日ソ共同宣言が署名され、国後、択捉両島についての記載は無いが、平和条約締結後に歯舞群島と色丹島の二島が日本に引き渡されることになった。ところが来日直前の読売新聞のインタビューに対して「ロシアには、領土問題はまったくないと思っている。ロシアとの間に領土問題があると考えているのは日本だ」と断言している。今回の首脳会談でもプーチン大統領は同じ主張を繰り返したようだ。四島はおろか二島すら還って来ない可能性を示唆している。プーチン氏が大統領の座にいる限り、領土問題は動かないし、ロシアが将来に渡って方針を変更することは微塵もない。ロシアの法律だけに基づいて実施される「共同経済活動」というおまけまで付いた北方領土返還交渉は、進展どころかむしろ大きく後退したと断言しても良いだろう。一般論としてどこの国でも領土問題で譲歩することはない。それが世界に共通する伝統的な思考法である。あわよくば領土問題が大きく前進、自分の人気取りになるという浅はかな目論みと野望を抱いて、プーチン大統領に擦り寄った。それを大統領に見透かされ、首脳会談で翻弄された。安倍首相の外交政策の稚拙さだけが再び浮かび上がった。

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