2016年12月9日

真珠湾訪問は外交失敗挽回策の切り札


バラク・オバマ米大統領が広島を訪問した際、安倍晋三首相は記者会見で「ハワイを訪問する計画はない」ときっぱり否定していたと記憶している。対米外交の切り札としてとっておこうという気持ちがあったかもしれない。しかしそのカードを切ることになった。その理由に関しては、度重なる外交の失敗があったから、というのがおおかたの観測である。すなわち米大統領選の最中に、ヒラリー・クリントン候補とだけと会談するという非常識なミスを犯した。ところがロナルド・トランプ氏に決まると、ペルーの首都リマでのAPEC首脳会議に出席する前に、ニューヨークに立ち寄りトランプタワーを訪れた。本人は「世界の首脳で一番最初に会談した」とご満悦だったようだが、これに対しオバマ政権が激怒したと報じられた。抗議したのはコンドリーザ・ライス前国務長官、あるいはキャロライン・ケネディ駐日大使ともいわれている。このためリマで予定されていたオバマ大統領との首脳会談が流れ、立ち話に終わったという。菅義偉官房長官は会見で真珠湾訪問は「戦没者の慰霊のためであって謝罪のためではない」と強調したが、言葉としてはなくとも、その行為自体を米国民は「謝罪」と受け取る可能性がある。私はそうであっても構わないと思っているが、首相にとっては恐らく不本意だろう。そういうリスクを抱えながら、立ち話で大統領に真珠湾訪問を申し出たのは、余程切羽詰まってのことだろうと想像する。対露外交では、ウラジーミル・プーチン大統領に翻弄され、北方領土返還に関しては雲行きが怪しくなってきた。来週大統領が訪日するが、首相の発言は「そう簡単な課題ではない」とトーンダウンしている。度重なる外交の不手際で焦り、自らの政権維持のため、なりふり構わずカードを切ったのだろう。

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