2017年1月31日

何かおかしいと感じたら声を上げることを恐れてはいけない

フレッド・コレマツの98回目の誕生日を祝ったロゴ(2017年1月30日

フレッド・コレマツ(是松豊三郎)
米国版グーグルのロゴ(Doodle)に日系2世フレッド・コレマツの似顔絵が登場した。コレマツは1919年1月30日、米国に移民した日本人の両親のもと、カリフォルニア州オークランドに生まれた。42年にルーズベルト大統領が署名した大統領令によって始まった日系人の強制収容に対して、人種差別だと訴えて従わず、逮捕されて有罪判決を受けた。戦後も違法性を問い続け、判決が83年に「強制収容は人種差別などに基づくものだった」として覆されることにつながったのである。98年にクリントン大統領から、文民最高の栄誉にあたる大統領自由勲章を授与された。2005年に死去。カリフォルニアやハワイ州などは、誕生日の1月30日を「フレッド・コレマツの日」に指定している。
75年前の第二次世界大戦中、フランクリン・ルーズベルトは大統領令9066を発令しました。これにより、西海岸の全ての日系アメリカ人を立ち退かせ、集団で収容することが認められたのです。より詳細には、大統領令は陸軍長官と、彼に指名された軍のあらゆる指揮官が、「軍管理地域を指定し…それらの地域からあらゆる人間を立ち退かせることができる」としています。注目すべき点、そして今日と類似している点としては、大統領令は日系アメリカ人を名指ししていなかったことです。私や多くのアメリカ国民が父の誕生日を祝ってくれる中で、私は大統領令の力を思い出された。私の父は正しいことのために立ち上がらなくてはならないと信じていました。私達にとって重要のは歴史の正しい側に立ち、過去の過ちを繰り返さないことです。
これはハフィントンポストによるEメールによる質問に対するコレマツの娘、カレンの返事である。グーグルのロゴはコレマツの98回目の誕生日に合わせて用意されたものだが、大きな反響を呼んだ。1月29日にトランプ大統領が難民・イスラム教7カ国の入国禁じる大統領令にサインしたからだ。これには伏線がある。昨年11月16日、米海軍特殊部隊の元兵士で作家のカール・ヒグビー氏がフォックスニュースの番組で、トランプ氏の政権移行チームがイスラム教国からの移民を対象に何らかの登録制度を設ける政策を打ち出したと伝えらえたことについて質問され「我々はイランに対してそうしてきたし、かつて第2次世界大戦中に日本人に対してそうしてきた」と語り、非難を浴びたからである。ロゴが米国版のみだったのは残念だが、説明の最後を「何かおかしいと感じたら声を上げることを恐れてはいけない」というコレマツの言葉で結んでいる。

2017年1月29日

北米自由貿易協定(NAFTA)がメキシコのトウモロコシ文化を破壊した

遺伝子組み換えトウモロコシを監視しよう(出典

農山漁村文化協会刊
ロナルド・トランプ米国大統領の「暴言外交」が波紋を広げている。時事通信1月27日付け電子版によると、トランプ米国大統領が不法移民対策として「メキシコ国境の壁」建設の大統領令に署名したことへの反発から、今月31日に予定されていたの米メキシコ首脳会談が中止になった。トランプ政権は北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを示唆しているが、メキシコのグアハルド経済相も「不利な立場に追い込まれるなら、NAFTA 離脱も辞さない」と警告したという。この協定に関しては『壊国の契約:NAFTA下メキシコの苦悩と抵抗』という興味深い書籍がある。カナダの女性文化人類学者、エリザベス・フィッティングが2011年に発表した研究書で、邦訳本が翌2012年に発行された。トウモロコシはメキシコが発祥の地とも言われ、主食であるが、2001年に地元品種に組換え遺伝子との交雑が発見され大問題となった。メキシコにおけるトウモロコシは、文化的アイデンティティと結びついて特別な意味をもった作物であるといわれている。トウモロコシをクレープ状にしたトルティーヤはメキシコ人の日常食だが、植民地時代は「進歩」を代表する小麦のパンに対してインディオの「後進性」を代表する食べ物とされていた。そうした蔑視の中で、農民は地域に合った多種多様な地元品種を育て、それを日常食に、また酒その他の儀礼食として守ってきた。しかし遺伝子組み換え種子は収量を上げる結構な技術ではないかという推進論が、メキシコでも多国籍企業や北部の大農園を中心にあがってしまった。米国からの輸入量が増え続け、価格下落で地元産トウモロコシは競争力を失ってしまった。今や都会で普通に流通しているのは米国産トウモロコシの粉や、レディメードのトルティーヤばかりだという。本来の風味やバランスのとれた栄養はなく、NAFTA は消費者の食生活も変化させてしまったのである。NAFTA が破棄されたらメキシコ経済がどうなるか私には予測できない。その足跡を俯瞰すると、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が危険であることが直感できる。そのTPPが漂流、新たなな日米通商交渉が始まるようだが、その展開が危ぶまれる。安倍政権は唾棄すべきだし、野党は頼りない。国民による厳しい監視が必要である。

2017年1月28日

水道事業民営化の危険を孕む日米首脳会談

蔡艨来源「火急火燎」(中国日报漫画

米国大統領選の結果が分かった途端、ニューヨークのトランプタワーに馳せ参じた安倍晋三首相。今度は新大統領といち早く会談をと狙ったようだが、一番乗りは落選、どうやら2月上旬に実現しそうだという。就任早々トランプ大統領は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの永久離脱を決める大統領令に署名、今後は二国間協定を重視すると宣言した。おそらく新通商協定の締結を要求されるに違いない。読売新聞1月22日電子版によると、米政府は麻生太郎財務大臣の動向を求めたという。そこで気になるのは、麻生大臣が2013年4月にワシントンで開かれた G20 財務相・中央銀行総裁会議の合間に、戦略国際問題研究所(CSIS)で講演し「TPP 加盟により、日本の各自治体の水道事業はすべて民営化します」などと発言した件である。水道事業の民営化問題は TPP 最大の懸念材料だったが、二人セットでという要請は、この件が首脳会談で持ち出される可能性がないわけでない。うっかり乗ってしまったら、日本人の生活にとって大変なことになる。なにしろ庶民の生活なんてまるで理解していない二人、あり得る話と警戒しておくべきだろう。安倍政権は信用できない。

2017年1月27日

西陣呼称550年記念西陣織展

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日 時:1月27日(金)~29日(日)10:00~17:00(最終日は16:00まで)
会 場:西陣織会館(京都市上京区堀川通今出川南入ル) 075-451-9231
主 催:西陣織工業組合(http://www.nishijin.or.jp

2017年1月26日

厚顔無恥「訂正でんでん」のお粗末


安倍晋三首相が参院代表質問で「訂正でんでんというご指摘はまったく当たりません」と答えたそうである。つまり「云々」という漢字が読めず、でんでんと読んだというのである。朝日新聞社の取材に対し、首相官邸幹部が「云々」と「伝々」はよく似ているから間違えたのでは、と庇ったそうだが、そもそも「伝々」ならどう考えても意味不明だし、実に苦しい言い訳である。これを知った多くの人たちが、副総理である麻生太郎財務大臣が、首相時代に「頻繁(ひんぱん)」を「はんざつ」、「未曾有(みぞう)」を「みぞうゆう」、「踏襲」(とうしゅう)を「ふしゅう」と誤読して失笑を買ったことを思い出したに違いない。例えば「侃々諤々(かんかんがくがく)」「磊磊落落(らいらいらくらく)」といった所謂(いわゆる)難読漢字とは違う。この国の首相に最高の知性を求めるわけではないが、やはり低い知性であっては困る。一般的な常識を持っていれば読めるはずの漢字を読めない今の首相に知性を感ずることができない。

2017年1月20日

個人的嫌韓感情で少女像撤去を求める安倍首相の愚挙

金信「終わらない戦争」(韓国大田日報

朝日新聞1月20日付け電子版によると、釜山の日本総領事館前に少女像が設置された問題で、安倍晋三首相が岸田文雄外相と対応を協議、対抗措置として一時帰国中の長嶺安政駐韓大使らの帰任を当面見送ると確認したという。首相は少女像が余程目障りのようだが、このような反応は、像を設置した市民の運動が効果的であることの証明でもある。総領事館前の像は一旦撤去されたが、市民の猛烈な反対にあい、再び設置された。歩道を管轄する釜山市東区の朴三碩区庁長は「少女像の永久的な保存管理策が必要だ」と述べたそうである。日本政府の思惑に反し、韓国政府からの歩み寄りはない。竹島に少女像設置計画が浮上、新たな問題の火種が持ち上がった。釜山の像に対し韓国の尹炳世外相が「国際社会では外交公館前に施設物や造形物を設置することは国際関係の側面から望ましくないというのが一般的な立場」と発言したが、韓国国内では激しい反論を受けた。以下はそのは尹炳世外相が、2015年12月28日の日韓外相会談後の記者会見で発表した声明の一部である。
韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する。(外務省のHPより
すでに前エントリー「韓国政府は少女像撤去を約束したわけではない」でも触れたことだが、両国間で公式な文書を交わすことは行われず、あくまでも共同記者会見での声明に過ぎない。少女像に関して正式な合意を得たとは言い難いのである。この声明を逆手に、撤去しないのは約束違反だと主張するのは無理がある。それでも政府、特に安倍首相が居丈高に撤去要求するのは、まともな外交交渉と言い難い、個人の嫌韓感情の押し付けに過ぎない。隣国と友好関係を図ろうという気配りが微塵もなく、為政者として国民の意思を無視している。従軍慰安婦は戦争犯罪の一典型である。そのイメージを抽象化した少女像は、それゆえに目障りで、必死になって歴史の狭間から闇に葬り去ろうとしているようにも見える。しかしながらいかに日本の首相であれ、外国の市民運動を抑えようという発想自体が無理なのである。首相の苛立ちはしばらく続きそうだ。

PDF
2015年12月28日の日韓外相会談岸田文雄外相と尹炳世韓国外相の記者会見声明文(韓国語PDFファイル)

2017年1月15日

元の鞘に収まった韓国少女像設置問題

Korea JoonGang Daily Cartoon Feb 13, 2014 ©Park Yong-seok

政府は今月9日に帰国させた長嶺安政駐韓大使と森本康敬釜山総領事を、来週にも帰任させる方針を固めたようだ。刀を振り上げたものの、目的を果たせず、こそこそと元の鞘に納めたのである。政府は単なる一時帰国と弁解しているが、明らかな詭弁で「召喚」だろう。一連の騒動で最悪だったのは、安倍首相が慰安婦合意に関連したテレビ討論で「日本は10億円を拠出した。韓国が誠意を示すべき」という発言、少女像撤去を迫ったことだ。これに対し韓国政界は猛反発、最大野党共に民主党の禹相虎院内代表は「予備費でも編成するので10億円を返そう」と主張、保守派の潘基文前国連事務総長までが、少女像撤去が条件なら「金を返すべきだ」と発言する始末。いずれにせよ、何の手も打てないままの大使、および総領事の帰任は、もはや少女像撤去は不可能になったと言える。ネット上で「国交断絶」と息巻いていたネトウヨ諸君は憤懣やるかたないことだろう。聯合ニュース2016年10月4日付け日本語版によると、安倍首相は元慰安婦に「謝罪の手紙など毛頭考えていない」と拒否した。この点でも慰安婦問題の「日韓合意」が空虚だったことが窺える。イラストは中央日報2014年2月13日付け英語版に掲載された風刺漫画だが、歴代の日本政府要人が、日本の戦争責任あるいは慰安婦問題について謝罪しているが、安倍首相はそれを拒否していると皮肉っている。諸悪の根源はここにある。

2017年1月10日

韓国政府は少女像撤去を約束したわけではない

Georges Bigot "China and Japan trampling Korea as Russia watches" (1904-05)
ジョルジュ・ビゴー「韓国を踏みにじる日本と清国」(1904-05年)ボストン美術館蔵

安倍首相は1月8日に放送されたNHK「日曜討論」で、在韓日本大使館と日本総領事館の前に設置された少女像の撤去を要求したそうだ。私は視聴してなかったが「日本は10億円の拠出を既に行った。次は韓国がしっかり誠意を示していただかなければならない」と話したという。安倍政権は国内に目を向けず、3年間で総額30兆円もの援助金を海外にばら撒いたといわれている。10億円は庶民にとっては確かに大金だが、30兆円と比べれば、この金額での居丈高な抗議に違和感を感ずる。これに対し朝鮮日報1月9日付け日本語版は、韓国政府は10億円という「金額」よりも、この10億円の「性格」により大きな意味があるとの立場だと解説している。韓国政府は「日本政府の首相が責任を認めたことは事実上『法的責任』を認めたものであり、これに基づいて日本政府の予算で補償される10億円も『法的賠償金』と呼ぶことができる」と解釈したというのである。国家レベルでは10億円は少額であり、最大野党の共に民主党の禹相虎院内代表は「10億円を返すよう尹炳世外相に要求する」と強調したそうだ。2015年末の日韓外相会談で結ばれた「慰安婦問題日韓合意」だが、両国間で公式な文書を交わすことは行われず、共同記者会見を開いて発表するという形式で行った。少女像について韓国の尹炳世外相は、会見で「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と発表したのみで、撤去を約束したわけではない。極めて曖昧で、真の意味での「合意」と言えるだろうか。問題の火種を残したわけだが、この点を振り返ると、10億円出したから少女像を撤去せよという主張は、むしろ滑稽ですらある。旧大日本帝国は1910年(明治43)に大韓帝国を併合したが、1945年(昭和20)に朝鮮総督府が米国に降伏するまで、35年間も統治が続いた。戦後70年の時を経たが、未だに韓国の人々が慰安婦問題に拘る背景に、私たちは穏やかな理解を示すべきだろう。

2017年1月8日

第8回「KYOTO地球環境の殿堂」表彰式&国際シンポジウム

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日 時:2017年2月11日(土・祝)13:00~17:00
会 場:国立京都国際会館メインホール(京都市左京区宝ヶ池)
定 員:1,000名(参加無料)
申 込:2017年2月7日(火)まで
主 催:京都環境文化学術フォーラム
詳 細:http://www.pref.kyoto.jp/earth-kyoto/annai/

PDF  フライヤーと参加申し込み書の表示とダウンロード(PDFファイル 1.09MB)

2017年1月7日

エクタクロームの復活に期待する


イーストマンコダック社が、米国ネバダ州ラスベガスで開催中の国際家電見本市「CES® 2017」で、カラーリバーサルフィルム「エクタクローム」を復活させる計画を発表した。スチル用と映画用の両方のフォーマットで、再設計して製造する予定だという。最初の製品の出荷は2017年第4四半期になると予想されているそうである。私は1960年代、大学で写真工学を学んだが、当時は「ロチェスター(コダックの工場があるニューヨーク州の都市)を追い越せ」 というのが日本の写真フィルム業界のスローガンであり、悲願でもあった。まさにフィルムの王者、リバーサルフィルムでは、エクタクロームとコダクロームの名が世界を君臨していた。ところが1990年、富士フイルムが「フジクロームベルビア」の製造販売を開始した。私も鮮やかに覚えているが、コダックを凌駕する製品で、これを機会に同社の業績は下降線を辿ることになる。2012年1月にコダックが、日本の会社更生法に当たる法律の適用を申請したというニュースが伝えられた。凋落の原因はデジタル写真への対応が遅れたことだったが、富士フイルムの追い打ちも見逃せない。尤も富士フイルムも、写真機材がデジタル化し、フィルムは次々と製造中止に追い込まれている。2013年秋に英国コダックの年金運営ファンドが新しい会社「コダックアラリス」を設立、その輝かしいブランドが残った。新しいエクタクロームはロチェスターの工場で製造され、販売されるそうである。音楽界ではビニール盤(アナログレコード)の復活が話題になっているが、これを機会にフィルムの良さも見直されることを期待したい。

2017年1月5日

花街の古写真を蒐集するオーストラリアの女性

Maiko wearing Black Crested Kimonos 1930s (Courtesy of Blue Ruin 1)

この記念写真は1930年代、京都の花街の「始業式」の日に撮影されたと思われる。小学校や中学校の始業式と同じで、花街によって日にちがずれるものの、おおむね1月7日に行われる。この日は今でも芸妓・舞妓たちも黒紋付の正式な場に着ていく着物姿で出席する。逆に言えば、伝統を遡る貴重な写真と言える。写真の持ち主はオーストラリアのアデレードに住む女性で、写真共有サイト Flickr で花街の舞妓、芸妓などの写真コレクションを公表している。同サイト上のハンドル名は Blue Ruin 1 だが、メールで問い合わせたところ、本名はヘレン・シセルトンさん。2007年から日本の絵はがきの蒐集を始め、すでに集めた絵はがきは、なんと5,000枚に達したという。eBay その他のオークションサイトで落札購入しているが、主に日本、アメリカ、ヨーロッパから出品されるそうである。この写真に対し彼女は「黒紋付を着て、新年のかんざしを挿しているが、稲穂が付いていない」と鋭い観察をしている。舞妓のかんざしには正月から12月まで毎月、季節感あふれる花をあしらうが、正月は縁起の良い松竹梅、鶴などのおめでたい題材が使われる。そして15日まで稲穂が添えられるのが習わしである。「今年も一年、稲穂のように頭をたれて謙虚に生きます」という意味が込められている。従って絵はがき用に、別の日に撮影した可能性もある。いずれにせよ、花街に関しては、ともすると京都人でも知らない風習があり、外国人でありながらその伝統文化に対する造詣の深さに感心する。

2017年1月3日

口あいて落花ながむる子は佛

仏花(京都市東山区円山町の東大谷墓地)

関東に生まれ育った私にとって、京都へ移り住んでちょっと戸惑ったのは、正月に人々が先祖の墓参りをすることだった。妻は京女なので、お付き合いで私も毎年正月に墓参するのが習わしとなった。東本願寺の墓地に出かけたが、大勢の墓参客で賑わっていた。墓石を洗い、仏花を供え、線香を炊いて合掌する。墓参りを済ませ、隣の大谷祖廟へ。第二十三代の彰如上人が「口あいて落花ながむる子は佛」と詠んだ歌碑がある。横にある急勾配の石段を登ると親鸞聖人の廟の扉が見えた。扉の両脇には夥しい数の仏花が供えられているが、供花台があっという間に満杯になってしまう。エレベータで下に降りると、一角に工事用シートで作った臨時の花壇があり、廟の前から下げた花が再び生けられている。花文字か描かれていて「遠慶宿縁」とある。遠く宿縁を慶べと読むのだが、これは『教行信抄』の中に出て来る宗祖親鸞聖人の告白だという。ところで美しくおごそかに飾ること仏教では荘厳(しょうごん)というが、このような花の再利用を再荘厳と呼ぶそうだ。束から解かれた仏花たちは交じり合い、別の命を与えられたようにの美しさを競っていた。帰路、その花文字から作られた堆肥をいただく。廟を出て、円山公園を抜け、今度は初詣客で満杯の八坂神社へ。仏から神へのハシゴである。

2017年1月2日

今年も風刺漫画の主役はトランプ次期米大統領

HELLO 2017 ©Clay Jones

ニュース雑誌 THE WEEK 電子版の風刺漫画特集を見ると、圧倒的に多いのがトランプ次期米大統領を主役にしたものである。写真はそのうちの一枚、クレイ・ジョーンズの作品である。各紙の電子版をブラウズすると、日本のマスメディアは風刺漫画に関しては低調である。頑張っているのは英字紙ジャパン・タイムズくらいだろうか。その点、海外の新聞、雑誌には優れた風刺漫画が掲載されているのが、ネットを通じて窺える。風刺、特に政治風刺に登場するのは、やはり時の著名政治家である。日本の安倍首相を描いたものも少なからずある。かつての王者はオバマ大統領だった。ところが昨年多かったのは大統領選に出馬したトランプ氏だった。オバマ氏もそうだが、トランプ氏は漫画になりやすい風貌をしている。そしてその言動が恰好のテーマになった。今年もやはり主役はトランプ次期米大統領が本命。続くのはロシアのプーチン大統領だろうか。風刺漫画には大いなる皮肉、時には毒が盛られている。描かれた本人たちがどう感ずるか興味深いが、その点に関しては情報不足である。いずれにせよ、風刺漫画に登場する政治家が時の人であることは間違いない。

2017年1月1日

あけましておめでとうございます

北野天満宮(京都市上京区馬喰町)

新年早々のご訪問、ありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。写真は京都の北野天満宮の縁日「天神さん」で撮影した骨董羽子板です。