2017年4月4日

駐韓大使帰任に見る安倍外交の不可解


政府は釜山の日本総領事館前に「少女像」が設置されたことへの対抗措置として、長嶺安政駐韓大使らを「一時帰国」させると発表したのは今年の1月6日だった。ところがこの措置に対し像を撤去する動きは見られなかった。安倍晋三首相が1月8日のNHK日曜討論で「10億円の拠出をしたから、釜山の日本総領事館前の少女像を撤去せよ」と発言したのが韓国側の反発を買ったようだ。売り言葉に買い言葉だろう「それなら10億円を返そう」という意見が噴出、さらに2015年12月28日の日韓外相会談で結ばれた「慰安婦問題日韓合意」を破棄しようという動きも起きたのである。1月10日に当ブログに「韓国政府は少女像撤去を約束したわけではない」という一文を寄せた。両国間で公式な文書を交わすことは行われず、共同記者会見を開き、少女像について韓国の尹炳世外相は会見で「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と発表したのみで、撤去を約束したわけではかった。韓国側に少女像撤去の動きがないことに苛立った首相は「早く帰す必要はない。国民も納得しない」と意地を張り、問題を長期化、事実上の「召喚」となってしまった。ところが朝鮮日報4月4日付け電子版が表現したように「安倍首相がひそかに見解を変えた」ため、85日ぶりの今夕、大使らが韓国に帰任することになった。威勢よく刀を振り上げたものの、下ろしようがなく、元の鞘に納めるという無様な結果となった。しかし何故このタイミングなのだろうか。大統領選が迫り、岸田文雄外相は次期政権への備えを理由に挙げたが、どうも説得力に乏しい。強硬策を続けても進展しないと判断したのか、それとも何か別の力学が働いたのだろうか。

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