2017年7月1日

航空写真を芸術の高みに誘ったアルフレッド・バッカム

Aerial view of Edinburgh ca.1920 National Galleries of Scotland

Alfred G. Buckham
上空に雲と複葉機、城を前景にロイヤル・マイル沿いに広がる古い街並み。1920年ごろ撮影された「エディンバラの空からの眺め」はスコットランドの航空写真家アルフレッド・バッカム(1879–1956)の代表作となっている。ロンドン生まれのバッカムは画家志望だった。ところが美術館で観たロマン主義の画家、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775–1851)の作品に打ちのめされ、画家になることを諦めた。代わりに写真に転向、1917年に英国海軍航空隊に偵察飛行士として入隊した。当初エディンバラの西に位置するターンハウスに配属になったが、後にフォース湾に面したロサイスを基地にした大艦隊に転任した。初期の偵察飛行は危険を伴った。バッカムは9回も危ない目に遭っている。ところで彼は二台のカメラを使用、一台は海軍の仕事、もう一台は彼個人が使用するための私用カメラだった。スコットランドの上空を飛び、雲の形態、丘陵や街の眺望、そしてしばしば天候の急変が演出する、光と影のドラマを好んでモチーフにしたのである。航空写真は地上で撮る写真とは異なる。しかしともすると、空から俯瞰することによって、地上の状況を記録あるいは説明するだけに終わる可能性がある。バッカムの偉大さは卓越した技術力を駆使、航空写真を芸術の高みに誘ったことではないだろうか。蛇足ながら、ウェブ検索したのだが、彼に関する日本語の資料を見つけることができなかった。どうやら日本では知られざる鳥人写真家なのかもしれない。

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